プロローグでのインディアン・ポーカーの描写は良かったのですが……。
『女皇の帝国』『8ガールズ オデッセイ』に続けて吉田親司祭り中。3冊読んだらこの作者の特徴が掴めてきた感じ。3作とも
の3つがミスマッチを起こしている感じ。週単位月単位で分載されるマンガ/アニメやそれを引きずった昔のライトノベルならそれでもかまわないのだろうけれども、今のライトノベルだとそれは致命的なような。
今作だと特に、主人公達の超絶能力が 2. のギャンブル対決というこの作品の根幹になっているギミックを安いものにしてしまっているので、その代わりとして登場人物相互の心のふれあいによるその変化の描写が重要になってくるはずなのですが、1. の主人公達の心理が最初から最後までほとんど変化無し。かといって 3. での世界の都合側を代表する(元アメリカ副大統領の)校長はあまりにミニマムな問題にせせこましい手段で干渉するだけのただの悪役になりさがっているし。
(ギャンブル勝負じゃなくて別の方の)同ネタ作品でも最近の新人による『たま◇なま』あたりは無論、古株作家による『グロリアスドーン』なんかでもそこらへんは外していないので、外している(というか考慮もしていない)こういう作品を読むと違いが気になります。
というかこの作品の場合、主人公達の超能力と世界(宇宙)の側の事情は抜きにした方が作者の得意な構築力が生きたのじゃないかな。今のままだと突っ込み所を増やし勝負を安くする役にしか立っていないし。あとこの世界に生きる事を嫌っている主人公灰谷亜美夏(はいたにあみか)の心理はもっと掘り下げた方が良かったような。彼女個人の内部での辻褄については(何せああいう背景のキャラだし)ともかく、作品としては「主人公に否定されている世界」というのは重要な事だし。
ゲームの天才、
それが彼女だ静かな戦いがある。たった一枚の札で
奈落の底に突き落とされることもある戦いが――。
Oh my God! —it's full of stars!
石ころの次は座敷童だよ。
跳訳で『海底軍艦』やりたいとか言ってる吉田親司氏。『女皇の帝国』がいい感じだったのでこれも読んでみました。
……うーん。せっかくのキャラ達が生かせてない。
仮想戦記が批判性、SFが論理的整合性の芸術ならば、現代のライトノベルのそれは主体者性になるでしょうか。そしてこれにはその主体者性が決定的に足りない。そこらへん先の『たま◇なま』『ミミズクと夜の王』といった、これと同様の異種コンタクト物の、ライトノベル新人賞受賞作群とは対照的です。
これは結局の所「お荷物が生き残れるかどうか」という話でしかなく、そしてその生存はプロローグの段階で決定してしまっている。後は単なる設定開示があるばかり。SFとしての荒(志願者が万単位で居るのになんでそれを差し置いて無知な人間ばかりでクルーを組むの? 現代の宇宙船にも当たり前にある「直接外を覗ける窓」がどこにも無い事に誰も疑問を挟まないのは何故?)はありますが、それ以前の問題でお話としてコケてしまっている。そのせいでSF/仮想戦記譲りの歴史批判も物語においては単なる蛇足のパロディーにしかなり得ていません。
とはいえその、日清・日露から日中・太平洋戦争、そして敗戦から北朝鮮への日本人妻を従う帰国事業あたりまでの歴史への批判部分がかろうじて読むに値する部分になり得ていますが。それにしても、それに対して7人の少女達は欺瞞に踊らされていたという程度の関係しか持たないです。その 7人+1 の「ゆきてかえりし物語」こそが本当に語られるべき部分だったと思うのだけれども、これでは彼女らは単なる狂言回しの立場。(そして他の 2人については言わずもがな)
MMORPG と RTS の現代に、吟遊詩人型おつかいRPG のロジックでしか作られていない小説は辛いです。
女だらけ(エイトガールズ)の宇宙船内に乗り込んでいた
「いるはずのない
少年」はたして
彼の目的は!?
1941 皇国占領!
祖国存亡の危機に 邪悪な赤き帝国へ
精強艦隊を率いて 少女は戦いを挑む
内親王眞子那子様大活躍。舞台は1941年12月8日、と史実での太平洋戦争開戦日にあわせてありますが奇襲を仕掛けたのは大日本帝国ではなくソビエト連邦。独ソが同盟を組み合衆国と日本は友好関係にあるという第二次世界大戦後の状況に似た感じ(まあ史実ではドイツは分割され東ドイツのみソ連と同盟ですが)。そしてそれは、史実よりもより「有り得た」ものでもあります。(日独防共協定なんて独ソ不可侵条約が締結されたあたりで破棄され敵対国家扱いに変わるのが普通だし)
起こる事態も冷戦時に自衛隊界隈で想定されていたソ連による北海道侵攻と東京空挺占領のパターンなのですが、重大な相違は大量破壊兵器として核兵器ではなく細菌兵器が想定されている事。「日本が大量破壊兵器を密かに開発していたので占領した」というまるで合衆国によるイラク侵略みたいな無茶な言いがかり。そんな事態において、たまたま欧州和平の進展のために外遊していた内親王那子が、細菌兵器『粘菌十三号』により国民を人質とされ動きの取れなくなっている遁走した帝国海軍の所にまで帰り着くのがこの巻の話のメイン。
小国トルコの心意気を見せ付ける巡洋戦艦ヤウズ・スルタン・セリムがイカス!
覇権国家と小国、大量破壊兵器と無差別細菌テロ、そして御召艦〈銀河〉とそこに搭載されたオートジャイロ『海兎』は現代の護衛艦のノリだし。当時の技術に準拠しつつも状況は現代的。
当時の象徴である国体に、現代のライトノベル読者でも分かりやすい「少女」という衣をまとわせ翻訳するのは、単なる「萌え軍事」の域を超える意義があります。ディテールの考証も仮想戦記作家だけあって的確ですし、ライトノベルからの仮想戦記入門としても良い作品。
話は史実での1941年12月8日を思わせる状況で終わっているので、この巻で打ち切りにしても話は終われる(史実を知っている人ならこの後の状況も同様になると想像できるでしょうし)と思うのですが、2巻も出る模様。どういう話に続けて行くのでしょうか。
こんなプリ内ン親セ王スを
僕たちは待っていた!!
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