作者こういうのが好きなんだなぁ、というのはよく伝わってくるのですがネタがうまく絡み合わないで終わってしまった感じ。
複数の仮想自我と精神の統合、フィクションを物語る事の意味。ネタ自体は一定の指向性を持っているのですが、それ暗示させるキャラ設定の数々がインフレを起こしたあげく立場の漠然とした口ゲンカと化した最終決戦でうやむやに。
ライトノベルの範疇であっても、キャラ萌えラブコメと伝奇ロボットバトルで終わらせない意欲は買うのですが、この領域に来ると上には上が居るわけで……。
これはこれでいいとして、次回作に期待です。
ところで、作中での2巻64頁の レギオン という言葉の説明で、聖書に登場する悪霊の名前が元でそれがローマ軍団の名称に流用された、という意味の説明をしていますが、現実には逆で聖書が成立したローマ世界当時で軍団を意味するレギオンという言葉をその悪魔が自称したわけですけれども。
これは作者が意図して因果関係を逆転させたという事でしょうか? だとすると作中世界が現実とは別の歴史を持っているパラレルワールドという事なのか。それとも作中世界の歴史でも現実同様だけれど、その記憶については作為的に現実を歪めて作られた、という話なのか……でもそれだと「どういう作為で」という別の問題が出るし。謎です。
もっともそのエピソード自体は聖書というフィクションが現実の事象であるローマ軍団の名前になる、という事ですからフィクションが現実を作るというこの作品のテーマに沿ってはいるのですけれども。
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