RE:凪野アオイ 超高速機動粒子炉船 春一番
こじんまりとした人情物ですね。その範囲ではいい感じ。
第6回 エンターブレインえんため大賞小説部門で『狂乱家族日記』と並び佳作をとった『超高速機動粒子炉船(チョロせん) 春一番』を改題、改稿したもの。ちなみにその第6回の優秀賞は『カエルと殿下と森の魔女』『渚のロブスター少女』の2作。『狂乱家族日記』は読んでないので分からないですが少なくとも優秀賞の2作よりはこっちの方が良いかな。ただ地味だけど。なので新人賞で佳作止まりなのは納得ですが。
いちおうスペオペなのですが感覚が『宇宙戦艦ヤマト』とか『銀河英雄伝説』とか『でたまか』とかのつまり突っ込んだら負けなそれなのでSF的整合性とか気にしては駄目。それなりに世界構築にはがんばってはいるとは思うのですが。
世界の枠組みとしてはディストピア物。そこでその世界に疑問を持ったりはじき出されたりした人々が寄り集まった小型戦闘船(乗員4名+戦闘機パイロットのロボ1)の活躍――というか生き残りを描く宇宙軍隊物なんですが、その船「春一番」の乗員以外の人間が匿名にしか描かれないので世界の広がりが感じられず、そのせいで世界全体が主人公達の不幸を演出するための作り物めいてしまっているのが残念。
分かりやすい悪役であってもいいから主人公グループ以外の顔が欲しかった所。旗艦である巨大戦艦のスタッフとか敵戦闘機のパイロットとか、作中に出てきた範囲でも取っ掛かりはあったはずなんですが……。
今の話の分(つまり「火の粉を払う」)を半分くらいに縮めて、残りをその現状を打破するための話に当てた方が(それで「次巻に続く」な感じになったとしても)良かったかもしれません。
キャラ自体は魅力的ですし、レイジ×アオイやリンタロウ×ナナのカップリングあたりをもっと突き詰めた話を読みたいとも思うのですが。これの続編より別シリーズでのリベンジを期待でしょうか。
- 著者: 原口美奈子
- イラスト: AKIRA
- 出版: ファミ通文庫(あ1 1-1 568) 紹介
- はてな, のべるのぶろぐ 2.0, [Lightnovel Wiki]
登場メカ・人物
- 春一番
- 超高速機動粒子炉船(チョロ船)。弱装甲の小型戦闘艦。船長の趣味で風呂付き
- TU砲: 素粒子ビーム砲。左右の2門搭載
- 粒子炉砲: 強力砲。使用時は TU砲 他、船の大部分の機能は使えない
- 木枯らし一号
- 春一番 搭載の旧式宇宙戦闘機。春一番 の護衛用
- NAC(なっく)
- 木枯らし一号 に搭乗する戦闘機規格型ロボット
- 一万尺
- 超巨大戦艦。春一番 が(他50隻以上の艦と共に)護衛する旗艦
- 凪野(なぎの)アオイ
- 記憶を消された惨敗兵「RE」。13歳。二等兵
- 山背(やませ)レイジ
- 無口なオペレーション、メカニック担当。上等兵
- 東風川(こちがわ)リンタロウ
- 堅物のパイロット、船医担当。副船長。少尉
- 野分(のわき)イッタ
- 呑気な船長。元本部の技術士官で 春一番 の設計者
- ナナ
- NAC の中の人。女性。喋れない
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- 老人と宇宙(そら):ジョン・スコルジー
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