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2007年7月29日

「2007年上半期ライトノベルサイト杯」自分の投票へのコメント

2007年上半期ライトノベルサイト杯投票〆切ですね。主催された平和の温故知新さんご苦労さまでした。

順位は最終日の駆け込み投票でも大きな番狂わせは無く順当に決着したみたい。

投票した以後に新たに読んだ対象作品(対象期間に発売されたライトノベル)はそこで2位に付いてる『ミミズクと夜の王』とこっちのリストに入れておいた『女皇の帝国 内親王那子様の聖戦』の2冊ですが、入れ替えて差し込みたくなる程の作品ではなかったので無問題。(どちらも読んだ内で中位には入る良作だとは思いますが)

締め切りも過ぎたので保留しておいた自分の投票作品へのコメントを。

「新人・新作部門」

リストにある作品でも自分的にライトノベルに入れない『風の聖痕RPG 基本ルールブック 』『沈黙のフライバイ』『虐殺器官』(これは投票後に読んだのですが)といったあたりは対象外にしています。

十八時の音楽浴

十八時の音楽浴 漆黒のアネット』はエロとSFとロマン。昭和初期変格小説のノリはそのままに現代的文体でリライトしたのみならず、跳訳者ゆずはらとしゆき自身の問題意識に沿って再構築している様が良。ライトHノベル的なエロの自己目的化にもならず、かといって一般レーベルのように(ラブではない)エロが作品テーマから排除される事も無いエロ要素に対する妥当な中庸さも現状でのライトノベルとしては貴重かも。

樹海人魚

樹海人魚』は中村九郎。純文作家ならともかくライトノベル界でこういう育てられ方をしている作家は貴重だよね。作家当人はすごく苦しんでるとは思うけれども。

零式

『零式』は百合国体のロマン対決。ロマンというものの必要性と依存性を肯定否定かまわず叩き込み坩堝で煮込みそして突っ走らせ荒野に駆け抜ける、神話。SFマガジン掲載版と文庫版の中間あたりに正解があったんじゃないかという気もするけれども、そこらへんの不在も含めての作品評価。

ねこきっさノベル

ねこきっさノベル』は萌え四コマと女流人妻エロゲー作家の幸運な結合。前世紀末のエピックであるエロゲーと現在のエピックである萌え四コマ。ひたすら他メディアからの収奪で成り立つ鵺であるライトノベルとしては今の電撃学園異能バブルが弾けた時のために、ここらへんからきちんと継承して取り込むフォーマットを確立しないと一つ前の少女レーベルバブル崩壊の時と同じ羽目になりそう。ていうか、続くんだか読みきりなんだか分からない(巻数表記無しの)1巻を出して、売れ行きを見ながら続くんだか完結だかわからない3巻までを出して、売れ行きを見ながら……みたいな週間少年漫画みたいな作品作りは止めにしないかな。ってこれには関係ない話ではあるけれども。しかし主役グループを共有するシェアードワールド(つうかシェアードキャラ?)的読みきり作品を複数の作家&メディアで競作というのは1つの突破口ではあると思う。

レギオンレギオン 2

レギオン』はよくがんばりましたで賞。現代的な問題意識と格闘し、勝ったとはとても言えずともかろうじて喰らい付いたのに敬意を表して。こっちのジャンルだと同じく前後編仕立ての『終わる世界、終わらない夏休み』(あきさかあさひ)という良作があるのですが、こっちに踏み込むと(作品自体の評価はともかく)作家が抜け出せなくなるという危険性があって……。『All You Need Is Kill』みたく無難なエンターテイメントとして逃げてかかれば問題は無いし口当たりもいいし、プロ作家として正解だと思うのだけれども、個人的には無様でもいいから格闘しているのを読みたいです。

「シリーズ作品部門」

「シリーズ部門」は質より可能性への評価優先。つーか質で選ぶとベテランが上で以上なので。新人ライトノベル作家を栗本薫神林長平と比べるのはいくらなんでも酷だし。

クジラのソラ 02クジラのソラ 03

部門問わずこれだけは絶対入れなのが『クジラのソラ』。『ほしのこえ』以後の、中二病世界系自己撞着でも美形愛憎劇でも、そしてもちろん懐古的冒険活劇でもない今のスペオペを堂々と炸裂させています。さくさくと出て次巻で完結、という事らしいので、おめおめと完結を遅らせ『ほしのこえ』に先を越され時代に取り残された『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』の二の舞は避けられそうです。……本当にあと1巻で終われれば、ですが。

二四〇九階の彼女 2

二四〇九階の彼女幸福は義務……てそれはもういいとして。彼女に会いに行く話がちゃんと彼女に会って終わっているのは(彼女が匿名の「彼女」のままなのも含め)すばらしいです。不在にして最強のヒロイン。それでいて各話ヒロインも自立しつつ余談に走らずテーマを補強する存在だし。理想的なロードムービー的ライトノベル。ところでこれ2巻で完結したので前後編物の後編という扱いのような気がするのだけれどもシリーズ部門でいいのかな? などということを投票〆切後に言ってもしょうがないですか。

ぼくと魔女式アポカリプス 2ぼくと魔女式アポカリプス 3

ぼくと魔女式アポカリプス』打ち切り記念。2巻発売時点で打ち切り決定だったみたいですので3巻で話の切りは付けられているのですけれども、肝心のゾンビ主人公の未来も未確定なまま。でもこの話の場合中心主題を脇キャラのエルフがかっさらってしまったので後は消化試合になってしまうでしょうから、ヘタに続けるよりここで終わるのが美しいか。愛憎伝奇バトルをひたすら引っ張るのこそ醜さの極みですし。

モノケロスの魔杖は穿つ 2

モノケロスの魔杖は穿つ』正直、3巻を読んでしまった今だと過大評価していたなと思わないでもないですが、それでも『虐殺器官』よりは最初からライトノベルなだけマシではあります。設計に実装が追いついていないというか。とはいえネタとして強烈なものがありますのでビックリ箱として割り切れば楽しい作品。脈絡とか整合性とか気にしたら負け。作者の俺設定を楽しむ作品ですね。

レジンキャストミルク 6レジンキャストミルク 7

レジンキャストミルク』はプリン。なんかライトノベルと聞いて真っ先に思い浮かべる代物をなんの批判も無く実装してみました、みたいな代物で6巻までは「今更シャナあたり読み出すよりはいいか」と惰性で読んでいたのですけど、7巻に至り面白いことに……といっても作品が面白いというより「作者逃げやがった」的な部分が。物体を描くのを止めて人間を描き出したとたんに逃げを打ちはじめるというのも面白い。客観的に見るとこれでやっと『ぼくと魔女式アポカリプス』の最初の地点にたどり着いたというだけなんですがまあ、次回作は期待できそう。


おまけとして今後の「ライトノベルサイト杯」への意見を。

投票のISBN付き限定を解除

今回で言えば『Fate/zero』のように、問題なくライトノベルでかつ、投票を匂わせた発言もあった作品でも投票方式がISBN単位なので投票不可能になってしまっています。他にもケータイ小説とかISBNの付かないライトノベルは多数あります。

例えば 【07 下期ラノベ投票/単発/0000000000】 を「その他」への投票として、そのコードの添付と、投票にタイトル・著者・発行者・発売日・(もしあれば)公式HPを記載する事で有効とすればISBNの無いタイトルの投票も受け付けられましょう。おそらくは大した量にはならないでしょう(もしそうでないなら「ISBNでの投票」というシステム自体が破綻した時だ)から集計時はその「その他」のまま集計し、最後に手動で振り分けるのでいいでしょうし。

部門名から「新人」を削除

新人であるか否かは対象作品の限定に何ら関係していないので投票者が混乱するのみです。

新作シリーズは「新作部門」へ

新シリーズでも期間中に何冊出たか(そしてそれが上下巻構成か)で部門が移ろうのは手間が増え混乱するのみで益が無いかと。

つーかぶっちゃけ部門分け必要?

単発作品といってもライトノベルの場合大半が「まだ続刊が出ていない」か「1巻で打ち切り」のシリーズでしかないですし区分けに意味がないような。それと投票がISBN単位なのに個巻ではなくシリーズ毎への投票というのも混乱の元。

シリーズ物か否かに関わらず、シリーズではなく1冊単位で10冊まで投票にしておいて、集計段階で別口にシリーズ毎に何人が投票したかを集計発表すればそれで済むような。

「シリーズ物ばかりだと寂しいので単発・新作にも票を割り振る」というのは個々の投票人が考えればいい事で、投票のフレームとして置く必要は無いと思います。

投票対象を「発売日」ではなく「読書日」で

業界側で「よく売ったで賞」をあげるのならともかく、読者側で「良かった本」を挙げるのが目的なら発売された日ではなくて期間中に新たに読んだ本を投票対象にする方がいいと思います。(フライング入手は弾くとしても)

投票に間に合わせるために速読、というのも本末転倒ですし。読みきれなかった分を次回回しにできるならそういう忙しない事もなくなるでしょう。


と、勝手書いてすみません。今後の企画にて頭の隅でいくばくかの参考にしていただければ幸いです。

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