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2007年6月 8日

アリフレロ キス・神話・Good by:中村 九郎

アリフレロ副題にもあるように神話的構造を強く意識した作品なのだけれども、恐らくは作者の資質がそういう、設定やらストーリーやらキャラクター性やらを重視するものとは相性が悪いのではないかと思えてしまいます。

キャラクターが触れ合う部分は鮮烈で、個々のキャラクターを駆動する情動の切実さは(舌足らずな表現にもかかわらず)強く切ないものなのに。

ライトノベル的粉飾が突っ込み所を増やしスピード感を削ってしまっているのがもったいない。かといって(商業的要求を抜かしたとしても)そういった補剤抜きにして作品を構築できるのかというと心もとない作者だし。

ライトノベルのレーベルのままでいいから一切の伝奇要素を排除した作品を書いてみるか、あるいはハヤカワ文庫JAあたりでライトノベルに囚われない作品を書いてみるかしたのを読んでみたいです。

関連作品・記事

冬の巨人:古橋 秀之
世界観という意味での神話的構造のリアリティの出し方は優秀な作品。しかしそれに使われてしまってRPG的(あるいはスタジオジブリ的)箱庭に留まっている感が。
二四〇九階の彼女:西村 悠
世界構築とキャラクターと作品構造が見事にテーマに縮約。2冊である構成と出し惜しみしないストーリーと使い捨てを辞さないキャラクターの扱いあればこその作品なのであまり比較対象にはならないですが。
レギオン きみと僕らのいた世界:杉原 智則
もう少しキャラクターの扱いに丁寧さがあれば。でもアリフレロみたいな「天然物」を見てしまうと、それをこれの作者に求めるのは酷かなと思えてしまう。
喚ばれて飛び出てみたけれど:丸本 天外
これも中村九郎と同様、ある意味天然な作者による秀作。さすがにアリフレロよりは遥かにまとまっていますが、それが故かあっさり打ち切り。残念。
琥珀の心臓:瀬尾 つかさ
キャラクターが神話になる、という意味では同様の名作。ただし中村九郎のそれがあくまで運命の問題なのに対して瀬尾つかさのそれは意思の問題。資質としては正反対の作家か。
ロクメンダイス、:中村 九郎
今作はこれに比べれば遥かに進歩しましたね。いくらなんでもこれと比較するのはアレだという事はともかくとして。
レジンキャストミルク:藤原 祐
教科書通りの作品。人工物では天然物に勝てない例として。
絶望系 閉じられた世界:谷川 流
本作の主題「アリフレロ」をほぼ完璧な形で造った作品。でもそれだけ。分かりやすすぎるくらいに分かりやすい作品ではあるのですが、それだけに「分かるだけ」で実感しずらい。テーマを継承する『ボクのセカイをまもるヒト』や『分裂』以後の『涼宮ハルヒの○○』でどこまでそれを追求できるでしょうか。

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