アリフレロ キス・神話・Good by:中村 九郎
副題にもあるように神話的構造を強く意識した作品なのだけれども、恐らくは作者の資質がそういう、設定やらストーリーやらキャラクター性やらを重視するものとは相性が悪いのではないかと思えてしまいます。
キャラクターが触れ合う部分は鮮烈で、個々のキャラクターを駆動する情動の切実さは(舌足らずな表現にもかかわらず)強く切ないものなのに。
ライトノベル的粉飾が突っ込み所を増やしスピード感を削ってしまっているのがもったいない。かといって(商業的要求を抜かしたとしても)そういった補剤抜きにして作品を構築できるのかというと心もとない作者だし。
ライトノベルのレーベルのままでいいから一切の伝奇要素を排除した作品を書いてみるか、あるいはハヤカワ文庫JAあたりでライトノベルに囚われない作品を書いてみるかしたのを読んでみたいです。
- 著者:中村九郎, インタビュー
- イラスト:むらたたいち
- 出版:スーパーダッシュ文庫, 紹介
- [Lightnovel Wiki], のべるのぶろぐ 2.0
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- 世界観という意味での神話的構造のリアリティの出し方は優秀な作品。しかしそれに使われてしまってRPG的(あるいはスタジオジブリ的)箱庭に留まっている感が。
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- これも中村九郎と同様、ある意味天然な作者による秀作。さすがにアリフレロよりは遥かにまとまっていますが、それが故かあっさり打ち切り。残念。
- 琥珀の心臓:瀬尾 つかさ
- キャラクターが神話になる、という意味では同様の名作。ただし中村九郎のそれがあくまで運命の問題なのに対して瀬尾つかさのそれは意思の問題。資質としては正反対の作家か。
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- 本作の主題「アリフレロ」をほぼ完璧な形で造った作品。でもそれだけ。分かりやすすぎるくらいに分かりやすい作品ではあるのですが、それだけに「分かるだけ」で実感しずらい。テーマを継承する『ボクのセカイをまもるヒト』や『分裂』以後の『涼宮ハルヒの○○』でどこまでそれを追求できるでしょうか。
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